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2024.08.18
前代未聞?!原作・槻影先生書き下ろしのショートストーリーつき!第二弾ティザービジュアルを公開!
第二弾ティザービジュアルでは、やる気のないクライが珍しくキメ顔をしていると思いきや、アニメ化に伴い宣伝用の写真を撮影中という、クスッとしてしまうような様子が描かれています。
また、生配信(https://youtube.com/live/bs8hFl-dOtU)では、第二弾ティザービジュアルにまつわるショートストーリー『《嘆きの亡霊》は収録したい』の生アフレコが実施されました。
このショートストーリーは原作/槻影先生の書き下ろしで、生配信内ではアフレコ用原稿を使用しております。
サイト内ではオリジナル原稿を公開いたしますのでお楽しみください!
ショートストーリー『《嘆きの亡霊》は収録したい』
「ますたぁ、いよいよあにめが始まりますね!」
「うんうん、そうだね……」
クラン《始まりの足跡》のクランハウスの四階。クランの運営に注力する職員のためのフロアの一室で、僕達はあにめ関係の仕事のために集まっていた。
あにめとは、簡単に言うと劇のようなものらしい。このトレジャーハンターの黄金時代と呼ばれる現代、偉業を成し遂げたハンターパーティは英雄の一団として持て囃される。観劇の題材になるパターンもあるのは知っていたが、まさか《嘆きの亡霊》がそのターゲットになるとは……確かに実績はあるし誇らしい事ではあるのだが、僕はそれがどんなストーリーになるのか不安でしかなかった。
僕が無能なのは言うまでもないが、僕以外の幼馴染についても良い子にはとても見せられない大暴れをしているのだ。どちらかというと、あにめに向いているのはアーク達だろう。
しかも、今日呼び出されたメンバーの顔ぶれも変わっている。僕は周りを囲むリィズ、シトリー、ティノの三人を順番に確認し、最後にカメラの準備をしてくれているエヴァに声をかけた。
「しかし、なんでこの四人なの?」
「先方の要望です。四人揃った絵が欲しい、と」
「私とシトとクライちゃんはまだわかるけど、ティーまで選ばれるなんて、物好きねえ。しかも、ルークちゃん達が呼ばれていないし」
呆れたようなリィズの声。確かに妙なチョイスではある。ティノもリィズの弟子なので《嘆きの亡霊》とは関係があるが、ルークは当のパーティメンバーの一人であり、そしてあらゆる意味で有名人だ。《嘆きの亡霊》の冒険をあにめ化するのならばルークはその中心になるはずである。いや、ルシアやアンセムが呼ばれていないのも謎なんだけど……。
そこで、人差し指を顎に当てて何か考えていたシトリーが、深刻そうな表情で言った。
「…………いや……待ってください。もしかしたらあにめの方向性が違うのでは?」
「方向性…………?」
「はい。もしかしたら…………冒険が題材ではないのかも。冒険だったら他のメンバーが呼ばれないのは不自然ですし」
そう言えば、あにめ化するという話は散々聞いていたが、内容については聞いていなかった。その辺の詳細についてはエヴァに任せているのだ。シトリーの疑問にエヴァが答える。
「そうですね……そういえば、どちらかというとコメディ寄りの話になる、と。ちなみに今回は呼ばれていないだけで、ルークさん達も出ます」
コメディ!? コメディになるの? どんな話になるのかは知らないが、普通の冒険譚より面白そうだ。何より、普通の冒険譚だとうちのパーティの評判が落ちそうだからな。
エヴァからの新情報に、シトリーが思案げな表情で呟く。
「なるほど、コメディですか。コメディ…………そして、今回、撮影のために呼び出されるために選ばれたこのメンバー…………そこから推測すると――わかりました! 今回のあにめはきっと、ハーレムラブコメです!」
「ハーレムラブコメ!?」
「!? シト、あんた変な物でも食べた?」
素っ頓狂な声をあげるティノに、冷ややかな目をシトリーに向けるリィズ。なるほど、ふむふむ。ハーレムラブコメか。つまり…………どうやら今日のシトリーはダメなシトリーのようだな。
シトリーが早口で言う。
「そう考えれば妹のルシアちゃんが呼ばれなかった事にも納得がいきますし、ルークさんやお兄ちゃんが呼ばれなかったのにも納得が行きます。いらないメンバーですからね……お兄ちゃんとか大きすぎて違和感あるし、ルークさんとか邪魔しそうだし。ね、ティーちゃん?」
「!? え!? えっと……その……そんな事ないと思いますけど……ますたぁ?」
「う、うーん……リィズ?」
「んー、確かに、ラブコメなら邪魔かもねぇ。ちょっとしんどいっていうか……」
酷すぎる。
シトリーが両手を握りしめ、意気揚々と語る。
「クライさんが主人公で私がヒロイン枠、お姉ちゃんが負けヒロイン、後二、三人適当なところからヒロイン引っ張ってくれば余裕でハーレムラブコメもいけます! これは偉業ですよ!」
「てめえ、誰が負けヒロインだ、こら! どう考えてもヒロインは私だろーが!」
「あのー……シトリーお姉様、私は――」
「…………ティーちゃんはクライさんを掠め取ろうとする泥棒猫の役です。にゃーと鳴きなさい」
「にゃ!? ……にゃあ」
「ちょ、ちょっと、皆さん落ち着いて――」
ヒートアップするシトリー達に、エヴァが止めに入る。
どうやら皆、あにめが楽しみのようだな。テンションがいつもと違う。しかしそれにしても言うに事かいてハーレムとは、発想が飛躍しすぎている。僕は手を叩いて言った。
「そうだ! ホラーかもしれないよ。シトリーが幽霊役で」
「!! う〜ら〜み〜は〜ら〜さ〜で〜お〜く〜べ〜き〜か〜! 私の男を取った奴は、誰だああああああああああああ!」
「ど、どんな幽霊ですか!」
「パニックホラー系かも。サメとか、怪物とか」
「!? しゃあああああああああああくしゃくしゃくしゃく! きるきるきるきるきる! オマエ、ツカマエル、カウ」
「何が出たんですか!?」
迫真の演技をするシトリーに、エヴァがツッコミを入れる。
「もしかしたら学園モノかも。ティノもいるみたいだし」
「!! ますたぁ先輩! 授業終わったんですね! 一緒に帰りましょう!」
「学長役かも」
「!? う、うぉっほん。ますたぁ君は、眉目秀麗、学業優秀の素晴らしい生徒じゃ」
「不良かもしれない」
「!?? ま、まったく、けしからん! えっと……ますたぁ君はもっと後輩に優しくせんといかんぞ!」
「……クライさん、もしかして遊んでます? その、そろそろ撮影を……」
白い目を向けてくるエヴァ。いや、まぁ……。
「いや、でもコメディだから、動物との触れ合いを描くハートフルコメディかも。リィズもいるし」
「!! わふん! きゃんきゃんきゃん! ごろにゃーん! ぶるひひいいいいいん! ぶるすこ!」
「人間役じゃないんですか!? てか、何の動物――」
「もしかしたらロボットかもしれない」
「ウィーン、ガシャン、ガシャン、ガシャン、ウィーン――コレガ、ナミダ…………ワタシモ、ニンゲンニ、ナリタカッタ」
「な、なんか設定生えてきてますけど――その、時間が迫っているので、そろそろ本題の方を――」
皆、迫真の演技だ。これならばどんなジャンルでも大丈夫だろう。
僕は最後にエヴァを見て言った。
「クライムサスペンスかも。エヴァがボスで」
「!? てめえら、いつまで、このエヴァ様を待たせるつもりだ! くだらねえお喋りは後にしな! 命が惜しいなら、全員、雁首並べてねえで、さっさと位置につけ!! 撮影終わらせっぞ!!」
「はい、チーズ!」
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© 槻影・チーコ/マイクロマガジン社/「嘆きの亡霊」製作委員会